2020年07月02日

非特異的腰痛の原因(1)

 皆さま、今日は。
 久しぶりで、四方山カイロ話をお送りいたします。

 突然に起こる腰痛とは、『ぎっくり腰』のこと。
振り向いたり、物を持ち上げたり、くしゃみをしただけで、一瞬の動作で襲ってくる激痛、欧米では『魔女の一撃』と称し、世界中の人が生涯で一度は経験するとされる腰痛の原因についてです。

 住んでいる町で、千人に一人が『ぎっくり腰』として、世界中となると、数えきれないとても大勢の人が手を腰にそえて苦痛に耐えておられます。

 腰痛疾患で耳にする腰椎椎間板ヘルニアや、脊柱管狭窄等は、痛みの原因が、レントゲンやMRI機器の画像から容易に特定されることに対し、『ぎっくり腰』は画像に表れず、原因が不明です。

 腰痛の原因が不明で、特定されないことが実はとても多いのです。
 腰痛疾患の分類を表1に表します。
原因が特定される腰痛は特異的腰痛で、不明の非特異的腰痛と区別されて、『ぎっくり腰』は非特異的腰痛です。
実に腰痛疾患の85%の人の原因は、現在でも不明のままです。
表1 腰痛疾患の分類

 非特異的腰痛の原因は、骨盤や脊柱の組織に変形や、変性変化が下地にあるのですが、骨盤が複雑に可動する構造にはなかなか近づくことが困難なのです。

医療が用いる検査手法では原因が特定されません。

 治療法は、安静療法、薬物療法、理学療法、牽引療法、運動療法、温泉療法と多岐の対処療法や、固定療法もありますが、一長一短で、原因に基づく本格的な治療方法の研究開発が必要でした。
腰痛原因の追及が行なわれない限り、的確な治療法は見過ごされたままです。

 非特異的腰痛に対するカイロプラクティックは、重症の仙腸関節性腰痛を除けば、施療後は階段を容易に上り下り出来る効果があり、実に的確です。
的確であるものの、施療する部位、腸骨変位(固定腸骨)の実態を客観的に示す、科学的な裏付け情報ほとんど見当たりません。

 医療とカイロプラクティックは、腰痛の原因が腰仙部の病理と一致しますが、前者は画像に特定されないので治療法は定まらず、後者は腸骨が固定する理由、メカニズムを把握できていなかったわけです。

 桜カイロプラクティックの20年間、取り組んできた研究テーマが、非特異的腰痛の原因追及です。
学術論文や単行本に発表し、腰痛に関しては、この代替療法が的確な治療法であることを啓蒙し続けています。

 本日は、骨盤、固定腸骨の解剖模式図、臨床像、実像をUPします。
その前に、固定腸骨の検出法について。

固定腸骨の検出法
 当院が用いる判定方法は、Goodheartと脇山のAKチャレンジ法で、判別しにくい固定の方向を特定するには少し工夫をしてます。
それは、臥位姿勢で被検部にわずかの瞬発力を加えた後、検査筋の筋力脱力の有無を繰り返すが、基準点数を判定するもので、異なる判定者が同じ被検者を個別に診てもほぼ同じ結果が得られる精度があります。詳細な手順は「からだのねじれを正すと交感神経が整う、 ㈱たま出版、東京. 2017」にわかりやすく載せています。
腸骨が歪む方向の解剖学的な模式図(図1)
図1 腸骨の固定方向模式図

 図1Aは矢状面における左腸骨の上前腸骨棘(ASIS)が前上方に移動後、元へ戻れず前上方に固定したAnterial Superial:AS変位を示している。図1Bは上後腸骨棘(PSIS)が後下方に移動後、元へ戻れず後下方へ固定したPosterial Inferial:PI変位を示している。図1Cは横断面における左腸骨が内方に固定(Internal):IN変位を示し、図1Dは右腸骨の外方に固定(External):EX変位を示す。
両側の腸骨には、AS変位,IN変位,PI変位,及びEX変位のいずれか一方向単独の固定、もしくは二方向が複合した固定がある(以降、AS,IN,PI,及びEXと省略する)。

健常者と有症者の固定腸骨の臨床像
 論文は、主訴のない定期的に来院される健常者(63例)、主訴が非特異的腰痛者(84例)、肩こり・頭痛の背部痛者(72例)の3グループについて左右の固定腸骨像を調べている。
結果は健常者の84%、腰痛者では100%、背部痛者の94%に固定腸骨が検出されている(表2)。
 固定の方向を調べると、大きな特徴があることがわかりました。それは各グループ共に左腸骨にはASとINを検出し、PIとEXはほとんどなく、逆に右腸骨にはPI、EXを検出し、ASとINはありません。腸骨の固定は、左右側で真逆の方向に固定しています。
右EXは健常者の60%、腰痛症者の82%、背部痛者の83%にあり、右EXが左AS、左IN、および右PIよりも有意に多い。右PIと左ASは正相関性がある。
 多重比較すると、健常者の右EXが腰痛者及び背部痛者の左AS、左IN、右PIよりも有意に多く、腰痛者、背部痛者の右EXは、健常者の左AS、左IN、右PIおよび右EXよりも有意に多い。腰痛者、背部痛者の左INは健常者の左ASよりも有意に多い(表3)。
健常者の右EXの分布は、想像を超える高頻度であり、グループ間のクラスター分析でも収束されることがわかった。
非特異的腰痛の原因(1)

非特異的腰痛の原因(1)

以上まとめると
1.いずれのグループも、左腸骨に検出される固定は、AS変位とIN変位だけで、右腸骨はPI変位とEX変位だけでした。
2.健常者の60%は右EX変位を有しており、変位なしは16%のみであった。このことは健常人は日常で仙腸関節変位(可動性不全)を有していることを示した。
3.腰痛症群及び背部痛症群は、80%以上が右EX変位を有し、左IN変位、左AS変位は対照群の1.5~3倍と有意差を持って多かったことから、有訴発症に多様な変位を伴っていることが確認できた。
4.各群の右EX変位はクラスター分析で集束され、ヒトは右EX変位を発症し易い構造体である可能性が示唆された。

 次回の、非特異的腰痛症の原因(2)は、
左腸骨には、AS変位とIN変位で、右腸骨には、PI変位とEX変位しかない理由と、日常で、健常者は右EX変位を有しているように推測される事に対し、なぜEX変位が存在するのかを調べた結果を記述いたします。

用いた文献
1. 日本整形外科学会診療ガイドライン(監修):腰痛診療ガイドライン2019、改訂2版、南江堂、2019
2. 吉野和廣: 健常者と非特異的腰痛症並びに背部痛症者における仙腸関節変位像の統計的分析. (第一報)..日本カイロプラクティック徒手
医学会誌,2008.(‘08年度 最優秀論文賞)
3. J.D.Cassiby,etal.:カイロプラクティック総覧:本間三郎ら監訳,第16章仙腸関節の病態生理,エンタプライズ,1993年.
4. R.Cailliet:腰痛症:萩島秀男訳,原著第5版,医歯薬出版,1996
5. 厚生労働省統計表データベースシステム:第2-53表 有訴者の総症状数、性・年齢階級×症状別.(参照 2008/5/18).
http://wwwdbtk.mhlw.go.jp/toukei/youran/data19k/2-54.xls
6. 脇山得行:図説AKのテクニック, エンタプライズ,1995.
7. 中川貴雄:脊柱モーション・パルペーション,第3版2刷,科学新聞社,.1994年.
8. B.Calais-Germain, etal.:動きの解剖学Ⅱ:仲井光二訳.肩甲帯自体の可動性, 科学新聞社,1997.
9. A.L.Nachemson:American Academy of Ortho-paedic Surgeons Symposium on Idiopathic Low Back Pain.In White AA.,eds.The
natural cource of low back pain. St Lowis: CV Mosby,1982.
10.吉野和廣著:からだのねじれを正すと交感神経が整う、 ㈱たま出版、東京. 2017



桜カイロ院長
吉野和廣
























Posted by 桜カイロプラクティック at 14:50│Comments(0)
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