2015年04月18日

交感神経機能障害は脊柱フィクセーションが関わるという仮説

皆様

 本日は星状神経節の機能が原因不明で亢進する理由として、頸椎フィクセーションが関わっているであろうというお話しです。


 腰痛や肩こりは、厚生労働省が掲げる医療分類の脊椎原性疾患に入ります。国民的と言えるぐらい多くの人がかかえる症状で、その原因には文字通り脊椎の問題が深くかかわっています。
 過去述べてきた骨盤の歪み、脊柱のフィクセーション、体幹の歪みの変化はバラバラで独自に生じるのではなく、体の補正機能と代償、あるいは代償と補填とも言える体を修復と崩壊にいたる内からの力がからんだエントロピーの法則によりもたらされると思います。
 以下の脊柱フィクセーションの発生と脊椎原性疾患発症の機序仮説を模式図で説明し、星状神経節問題もその一環です。


 骨盤を上から見た模式図で、矢印のように右側の骨盤が前方側に歪んでいます。わかりにくですよね。
右EX変位
図1 右仙腸関節はEX変位する:
 右仙腸関節のEX変位というのは、右側の寛骨が外方に歪み可動性は失われたフィクセーションを起こしたことを言います。

 EX変位の臨床データの裏付け資料は、四方山話の
2008年8月号 タイトル:「体の超過酷な部位、それは・・」、並びに
2008年9月号 タイトル:「体の超過酷な部位、それは・・(パートⅡ)」そして
2008年12月2日 タイトル:「骨盤のズレ その実態とは」
の詳細な解説をご覧いただければと思います。

 右仙腸関節がEX変位を生じることが脊椎原性疾患発症の発端となります。
骨盤がフィクセーション化するのは10歳代という若い年齢で始まっていて、それは左脳の優位性がからんだ左右の足の非対称性の運動機能の違いがもたらしていると考えます。

 長年の研究を費やして浮き彫りにすることが出来たのは、皆様が骨盤の歪み方を教えていただいたおかげです。ありがとうございました。



 右側の骨盤が前に歪むと、からだの右側は腰から上が前に歪むこととなります。
体幹左回旋
図2 体幹の左回旋:
 加齢に従い、一方的に右骨盤と右側の肩・体幹が前へ歪み、左側は後ろに下がることとなり、体を上から見ると左右の肩の向きは左回旋をするようになります。

 体幹が年齢に従い左回旋している臨床データは、四方山話の
2014年4月2日 「あなたも体は左へねじれている (パート2)」
に詳細に解説をご覧いただけます。



 体幹が左にねじれて来ると体は姿勢を安定にする作用が働きます。固有感覚受容器などの補正機能に基づいたもので、脊柱と姿勢に関わる筋肉が関わってきます。
脊柱右回旋補正
図3 脊柱と姿勢筋による補正作用:
 体の向きを変える筋肉は脊柱起立筋が知られますが、体幹の姿勢には脊椎に直接付着する横突棘筋群が働きます。図3の脊椎の左側にある姿勢筋を楕円形の斜線で表しています。

 姿勢筋というのは上下の椎骨間に連なり、下側の椎骨を土台に上方の椎骨を右回旋させて脊柱は右回旋します。
体の回旋を的確、正常に補正できる人は体幹を左回旋から中間位に近づくし、補正の力が強すぎる人は体幹を右回旋することもあると思われます。

 姿勢筋は収縮を長時間にわたり続けることは困難なことで、筋肉の機能は損なわれ自身では弛緩することが困難となり収縮したままの筋肉障害をもたらします。
脊柱右回旋変位
図4 胸腰椎のフィクセーション化:
 特に上部胸椎あたりの姿勢筋はこの状態に陥り、上部胸椎は可動性不全となり図4の赤色の椎骨はフィクセーション化します。フィクセーションは胸椎1番~胸椎2番が高頻度でしたが、これには胸郭の立体構造に起因します。
 全肋骨中でも第一肋骨が最も固定していることや全胸椎中でも胸椎1番~2番の回旋が最も大きいことなどが理由で、最大の負荷が掛かり回旋性のフィクセーションを生じます。

 脊柱の立体構造が変形するのは組織の中からではなく外形が湾曲し許容できない圧力を受け変形していくことや、脊椎はもともと独自の立体的な配置というものはなく、立体構造は体幹が過去に受けた負荷経験度に依存するとも言われるように、右の回旋変位を伴う脊柱が形成されたとしても不思議ではありません。
 
 左にねじれた体幹から逆方向に補正を行ういわば姿勢のホメオスタシスが働いて、体を安定化させるので、その補正は脊柱を代償性のフィクセーション化し、時間をかけて体の機能低下になってしまうように考えます。



図5 下部頚椎のフィクセーション化:
 頸椎の6~7番を黄色で表しますが、左回旋のフィクセーションを起こします。これは先に胸椎1番が強い右回旋のフィクセーション化しその結果、肋骨で支持されない頸椎7番は逆の方向のフィクセーションを形成します。

 下の椎骨がフィクセーションになると、上の椎骨は逆方向に歪むことを「カンパンセーション」と呼ばれる脊柱特有の歪みがあることがカイロプラクティックでは知られています。



 星状神経節は第8頸神経からはい出る交感神経の細胞が集まる代表的な節です。大きさが数ミリ程度で脊柱の前方側面の両側に付着しています。
下部頸椎と星状神経節
図6 脊柱フィクセーションは交感神経下位中枢を障害する:
 下部頸椎と上部胸椎が真逆方向の回旋性のフィクセーションを大変起こしやすく、この歪み方が星状神経節に物理的な圧迫をもたらせ星状神経節は亢進状態になってしまうものと推測をしています。

 図6で桜色の上端は星状神経節を表しますが、上部胸椎(赤色)と下部頸椎(黄色)間がフィクセーション化すると、付着した神経節と線維は伸張され物理的な伸展負荷を受けるので誤ったインパルスが発生し、遠心性・求心性のパルス活動が誤作動し続け臓器間との協調が失われ統合システムに障害を作り、星状神経節が関わる自律神経失調症につながると考えています。

 あるいは第1胸神経から第3腰神経程度までの各分節の十数個がつながり数珠玉状の交感神経幹節は脊柱フィクセーションが影響をもたらせていることが推測されます。

 それぞれの交感神経関節は神経線維を出し、頭部、胸部、腹部、四肢のすべての臓器、組織の隅々につながりますが、上下の交感神経節及び脳脊髄神経と接続しながら脳血管や心臓、腹部の臓器に信号を送り、また受け取り、臓器間の機能調節を統合する下位中枢なのです。



 以上が脊柱フィクセーションの発生と交感神経節の機能障害、特に星状神経節が亢進し続けるメカニズムを述べました。  


Posted by 桜カイロプラクティック at 18:18Comments(1)